本日から,神戸大学大学院人文学研究科教授の奧村弘先生と,兵庫丹波の森協会 丹波の森研究所 専門研究員の横山宜致による「地域の成り立ちと構造」のセミナーが始まりました。
初回となる今日は奥村先生にご担当いただき,先生のご専門の一つである「地域歴史遺産」に関して,詳しくご講義いただきました。先生がこの研究を専門とするきっかけとなったのは,1995年に発生した阪神大震災でした。阪神大震災の際に大規模災害時の資料保存の活動が研究者のみならず,行政や市民の手によって広がり,地域に残る歴史遺産の大切さを知ることとなりました。
講義資料によりますと95年の阪神・淡路大震災より以前となると,1948年の福井地震まで47年間,本州ではM7.0を超える大規模な自信がなかったとのことで,これは歴史的に見ればかなり特異なケースでした。そのような経緯もあり,阪神大震災以前には,防災に対する学びもそれほど発達していなかったということです。
日本の資料保存の特色は旧小学校単位や旧中学校単位に分散されて保存されていることで,それは各々の時代に市町村の合併が繰り返されたことと深い関係があります。ただ,東アジアでこれほど文字資料が膨大に残っているのは日本だけで,それだけも世界的な価値があるということです。
講義の後半は,大規模災害時の地域歴史遺産の保存方法について学びました。大規模災害時の資料保存の活動は何を対象とするのかというと,一つは被災歴史資料,もう一つは災害資料です。前者は,災害によって破損したり,水に濡れた歴史的な資料であり,後者は被災の状況や復興過程に関するさまざまな資料です。被災地域の歴史は,この二種類の歴史資料により過去から未来へとつながっていくとのこです。
そして,①地域歴史遺産は単に「ある」のではなく「なる」もの,地域の文化の継承とともに価値を増していく存在であり,②地域社会への豊かな感性を育てるもの,と締めくくられました。地域歴史遺産は,決して遠く離れた世界のものではなく,われわれの生活と共にある全ての人にとって関係あるものということがよく分かりました。次回以降が楽しみです!
充実した講義資料