2011年12月5日~7日の3日間、森林動物研究センターの研究部の方々を中心に実施しているニホンザル個体群調査に参加してきました。
■食べ物
<自然>ヤブニッケイ(クスノキ科)の実…下の写真の黒い実です、わかりますか?
<半自然>柿
<人工>黒大豆、さつまいも、つるし柿
■食べる行動
黒大豆や柿をよく食べる時期ですが、それだけで過ごしているわけではありません。ヤブニッケイの樹で総勢10頭のニホンザルが入れ替わり立ち代わり、実を食べていました。そのほかにも、雑草や細かい虫なども食べていました。畑で乾燥している黒豆は、やはりかっこうの餌になるようですね。収穫し忘れた畑の作物なども同様です。
ーーーここからは、今回のサル観察から、サルの追い払い時の注意点をまとめますーーー
■サルが畑にでたら30分以上は警戒を
約30頭で構成されるC群では、群れの端から端まで、直線距離にして90m~250mは離れていました。
群れの中心部が一か所を横断するのにだいたい10分、群れの端にいる若いオスやメスなどの横断を入れると、30分はかかります(ときにはいったりきたりしてそれ以上かかることもあります)。ということは、群れの中心部を追い払って(もうサルがいなくなった!)と思っても、その後20分くらいは警戒しておかないと、群れの外側のメンバーがまだ残って悪さをする可能性がある、ということです。畑の長さが50mくらいだとすると、その5個分は離れた場所にいる、ということです。
■秋ごろから冬にかけて、群れと離れて行動するサルが増えます
群れを構成するメンバー全体を線で囲ったものを”群れのまとまり”とすると、そのまとまりはきれいな円を描いているわけではなく、アメーバのような形をしていて、群れの中心から一番外側に位置している個体までの距離は一定ではありません。秋ごろから冬までの間は、交尾期といって、年に一回の繁殖時期です。その頃、群れのまわりには群れ以外のオスが頻繁に現れ、群れのなかにいるメスと交尾をしようとします。群れにいるメスは、群れ以外のオスと交尾をしようとすると群れ内のオスに怒られますので、群れから離れて交尾をします。こうなると、アメーバ―の輪郭はより広がって、群れの中心は遠くにいても、目の前にはサルがいる、ということがあるわけです。
■痛くもかゆくもない脅しは効果なし、追い払い方もアレンジを
犬の吠え声や空砲など最初はサルが驚いて逃げるような仕掛けも、一度自身に害がないと思ったらサルはまったく逃げません。サルを驚かして逃げさせるには、サルに見えないように隠れて花火や爆竹を鳴らすほか、追いかけることが重要です。
■サルの声が聞こえたらすぐに追い払う
今回、サルが出たときに集落の方々が出てきて追い払いなどをされているケースもありましたが、手ぶらで出てきて「こらっ」というだけであったり、「あらー、あちらにもサル、こちらにも…」というように、サルに対して威嚇になっていない対応が多かったです。このままでは、いつまでの集落にサルが居座ることになります。サルに居ついてほしくない場合は、根気強く(ここは食べ物を食べるところではない)という学習をさせることが大事です。サルの声が聞こえたら手ぶらで外に出るのではなく、ほうきや棒でもよいので振り回して、サルに立ち向かってみてください。それで5mでもサルが移動すれば、それだけ、サルにとって(その場所でえさを取るコスト)が高くなります。
ーーー以上、ささいなことではありますが、またみなさんでがんばって追い払いましょうーーー
布施未恵子